去年 12 月頃、事件は起きた。そう、事件は会議室ではない、斎場で起きたんだ…
ことの始まりは同級生A子の親が亡くなり、そこに挨拶に出かけたB男の話であ
る。
その日は、宮之浦で通夜が楽養送とさくらと2件あり、A子の葬儀はさくらで行わ
れた。そんな中に、楽養送自動ドア前に現れたB男の姿。その姿をロビー内にいた
従業員が気付き「ん!?」と目を見ると「うん」とうなずき返す。
「あーB男、ここの亡くなった方と知り合いなんだなー」と思い、店にあがってき
た従業員、「B男、式場に来てますよ」と話した。
「もしかして、間違えてないだろうか」と慌ててロビーを見渡したが、もう受付を
済ませ、その姿はなかった。
数分後、生花店で仕事をしていると、お返し物を片手に慌ただしく近寄ってくるB
男。
「もしかしてー」と薄ら笑いしていたら「間違えたーA子の所じゃなかったー」そ
の答えを聞いて、私も従業員も大笑い。
私も「ここの人、知り合いじゃなかったのー」問いに「全然知らんよー、何で教え
てくれんかったとかー」と嘆く。私も「なんで顔見た時に頷いたんだよ」の問いに
「俺来たよー」と男としての大きな頷きだったそうだ。
何だかんだの会話の後に俺に「A子の所行かないといけないから 5000 円貸してくれ
ー」とかわいそうな願い。その言葉を聞いた従業員が「私が受付に行って返しても
らいましょうか」と天使の声。
そして従業員はB男に代わり受付に向かい「先ほどの方、間違えたそうです」と受
付の方に説明、「そうですよねー」と半笑いされながらも返してもらってきた。
間違えた香典も手元に戻ったことだし、B男に全貌を聞いてみた。まず式場に入っ
たら一列に並ぶ知らない人達、当然いないA子の姿。「あれ」と思いながらも一礼の
後、祭壇にある故人の姿。
「んー知らない人、俺の知っているおじちゃんの姿ではない…あー、間違えた」と
やっと間違いに気付き、頭の中では念仏でなく「どうしよう」とパニクりながら
も、手を合わせたまま固まるB男。
だからといって動かざるをえないし、知らない遺族の前に進む身体。そんなこわば
ったB男にかけられた地獄に落とされるような遺族からの一言。
「お知り合いですか」
その一言に対し「えー」とか「はぃ」とか無難な言葉を返せばよかったんだけど、
そんな余裕はないB男の頭。そしてその頭が出した言葉。
「なんとなく…」
それを聞いた遺族も「なんとなく…ですか…」「ハイ」と言う言葉を残し式場を後に
したそうだ。
入口も看板立っているんだけど、思い込みはそんな看板をも見えなくさせてしま
う。
みなさん、式場に入る前は今一度ご確認をお願いします。
同級生B男の願いです。
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