一ヵ月間ずっと雨、晴れたと思ったらすぐにくずれ、パラパラと雨が降る毎日。洗
濯物は乾かない上に、家中カビだらけ。掃除をしても次の日には畳に雪が降ったよ
うなカビが生える日々。
そして、台風の到来をきっかけにやっと梅雨明けし、暑い夏が来た。ついこの前ま
でカビで苦労していたのが嘘のように大汗をかく毎日。
そして、もうお盆。
島外に住んでいる人達がたくさん帰ってきた。お店にも以前お世話になったご葬家
様たちがお花を買ったりしてお盆の準備に大忙し。島にいるのは年をとり一人残さ
れた親。子供達が声をかけてもやっぱり住み慣れた島に残り、ゆっくりとした時間
を過ごす。島外にいる子供達、孫達を気にかけながらも現実と向き合う親。そんな
孤独を感じる生活の中、お盆を迎える。大切な人との別れを、つい昨日まで日が沈
むと同じように静けさを受け入れていた毎日だった。一夜にして、一変して変わ
る。
子供達、そしてかわいい孫達を連れての里帰り。一人分しかなかった料理も机に並
びきれないほどの料理に変わる。たくさんの靴、たくさんの洗濯物、家中に響き渡
る笑い声。
今まで正月でも揃わなかった家族が、昔のように顔を合わせ、増えた家族の笑顔が
昔以上の幸せが食卓を包む。ただそこには一緒にいてほしいあなたがいない。祭壇
に飾られたいつものように微笑んでくれている一枚の写真。聞こえてくるいつもの
笑い声。思い出と一緒にまたあの日を思い出す。嬉しい反面、寂しさが増す。
ほんと、家族が揃うのは家族の命が消えた時かそう初盆の時だけだろう。それ以外
はやっぱりみんな生活があり、思っていても集まれないのが現実。そしてみんな忘
れる、いつも自分たちが倒れないように支えてくれている親がいる事。親はいつも
子供達の背中を見ている。子供はそんなことには気付かない。お盆も慌ただしく過
ぎていく。2、3日すると一人消え二人消え、そしてまた一人の夜を迎える。昨日
まであんなに明るく騒がしかった夜も、今は静けさが広がる…。仏間に微笑むあの
人も寂しそうに見える…。楽しい時間だった分だけ、一人になった時寂しさが増
す。
「またいつ会えるのだろうか、子供達、そして孫達に…」
子供達は、島外に帰れば忙しい毎日。子育てに仕事。
でも忘れないでほしい、島に残る親の事。心の一方通行だけにはなってほしくない
と思う、お盆の夜。
今までにないくらい長かった梅雨。